先日Audibleにて原尞著「私が殺した少女」を読了しましたので、感想を書いていきたいと思います。
音声作品として(★★★★☆)
この作品のナレーションは女性のナレーターの方がすべてを担当しており、またキャラクターによって音程の高低、演じ分けがきちんとされているため、聞いていてのストレスがありません。事実私自身この作品を聞きながら寝ましたが、問題なく寝付くことができました。下記にも書きますが、作品全体はそこまで重い雰囲気が漂っているわけではないので、一言一句内容を漏らさずに聞き取らないと話の筋がわからなくなるわけではなく、主人公の軽妙なセリフのやり取りを味わうくらいのスタンスでゆる~く聞き流すのがおすすめです。
この作品を音声作品としてみた場合、寝ながら聞き流せるぐらいストレスない作品であり、軽妙なセリフのやり取りが心地よいので星★★★★☆とさせていただきます。
小説としての評価(星★★★★☆)
事前にハードボイルド小説の傑作だとの前情報を得てから見始めました。ハードボイルドの意味合いが曖昧だったので少し調べてみると、ゆで卵の固ゆでを意味する。転じて理性的で感情に流されない、肉体的にも精神的にもタフな人物のことをハードボイルドと表現している。実際本作品の主人公である探偵の沢崎は警察にもヤクザにも女性にも依頼人にも自分のスタンスを変えず、ボクサーとも喧嘩をする、文字通りのハードボイルドな人物として描かれています。自分のようにハードボイルドとは何かが曖昧な人が読むには非常に良い作品です。 作品全体の印象は非常に夜の匂いが香る程度の軽めな小説だな、との印象です。唯一重い雰囲気が漂っていたのは夜の廃業した老人ホームのシーンですね。あそこだけは自分の呼吸音が近づいてくる誰かに聞かれるのではないかと思える重めの描写がされており、聴きごたえ有りです。
1996年出版の小説ですが、四六時中タバコを吸い続けていたことから、もっと古い作品である印象を受けました(出版年を知らなかったら1980年以前の作品だと思っていただろう)。小説はなんだか作成年代による時代感をド受け止めればよいのだろうか、と少し考えている私がいる。この時代の違いによる違和感を時代劇を見る感覚で遠く離れた時代として受け入れていけばよいのだろうか。それとも現代劇の延長線上として受け入れるべきなのだろうか。この年代の小説を読む際に自分の中で葛藤が生まれてしまう。
小説としての評価としては、ハードボイルド小説とはなにかと知りたい方、軽めの雰囲気で主人公の軽妙なセリフのやり取りを楽しみたい方におすすめです。自分の中では傑作とは言えないものの1ジャンルのおすすめと言える本ですので、星★★★★☆とさせていただきます。
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