先日Audibleにて薬丸岳著「罪の境界」を読了しましたので、感想を書いていきたいと思います。
・音声作品としてみた場合の評価(星★★★☆☆)
この作品のナレーションは男性女性の2名によって演じられており、章ごと交互に交代しています。そこが個人的にプラスポイントでありマイナスポイントです。男性キャラと女性キャラで演じ分けしているのではないので、次の章になると急に主人公たちの声色が変わってしまう。想像してください前の章では男性が演じていた男性主人公が、次の章では急に男性主人公を女性が演じてしまうため、ストーリーに没入していく前にどれが主人公の声なのかを新たに覚えなおすという手間が毎章発生します。これがストーリーに没入していくことを阻害し、聞き続けることへのストレスになってしまています。 この切り替えがうまくいっている間はナレーションの切り替えイコール場面や章の切り替えになるた め、ストーリーの緩急を生み出します。 この作品を音声作品としてみた場合、章が変わる毎のストレスが気になった点を加味して星★★★☆☆とさせていただきます。
小説としての評価(星★★★☆☆)
ストーリーとしては加害者サイドと被害者サイドのエピソードが対比される形で描き続けられています。大まかに言ってしまえば加害者サイドは自分の立っている場所、進んでいく場所が袋小路であることを明らかになっていき、反対に被害者サイドは開けた場所に繋がっていくことが明らかになっていくという、ある種定型的なストーリー展開です。そのためかそこまで聞き終わってからの驚きや読後感の良さはありませんでした。 ずっとタイトルの「罪の境界」の「罪」とは何を示しているのかを気にしながら聞き進めていきましたが、犯人の関係者から発言でやっとわかったのですが、そこまで驚きや感動はなく、「うん、そうだね」程度です。感受性の高い20歳前後で、同様の意味合いのメッセージをより作品の根幹として落とし込んだ「空の境界」という作品を読んでいた私には響きませんでした。 ただ「罪」について発言した犯人の関係者の覚悟の決まり方と行動の一貫性には、本作品のキャラクターの中で最も強いリスペクトを抱かせる良キャラだと思います。
小説としての評価としては、多分来年ぐらいには読んだことを忘れるレベルの作品です。私に暇つぶしをさせてくれてありがとうという意味で星★★★☆☆とさせていただきます。
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